関節が正常の範囲で動くためには、関節の構成体である骨・軟骨・関節包・靱帯に異常がないだけでは得られない。骨運動が起こればその運動の拮抗側に存在する筋・神経・皮膚等の軟部組織に十分な伸展性(elasticity)が必要となる。ROMとは“関節”の可動範囲とされていて、可動域制限はimpairmentとして捉えられるが、器官(organ)としての“関節”には神経・筋など他の器官は含まれない。“関節”の機能は“動かされる”とうい他動的な機能のみである。ところがROMを制限する原因には、関節を取り巻くこれら関節包外器官の伸展性の喪失も含まれる為、治療にあたってはその原因を検査によって明確にしなければならない。勿論原因によってその治療法が異なるので、単に“動かない”から“動かす”では治療効果は望めない。検査によってROMの制限因子を確定することは、臨床では必ずしも容易ではないが、他動的に骨運動とは別に関節包内運動のみを起こすことが可能な為、これを利用すれば関節包外と包内の原因を区別するときの助けになる。 |